ラーメンの鬼・佐野実氏がスープまで飲み干した「こだわりの一杯」 → 実はアスリート向けだった / 東京・八幡山『支那そば 孤高』

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ラーメンの鬼・佐野実氏といえば、ラーメンへの並々ならぬこだわりを持つ『支那そばや』の創業者。メディアに多数出演していたことから、ご存じの方も多いだろう。こだわりが強く、自他共に厳しいイメージを持たれることも多かったようだ。

そんな「ラーメンの鬼」が、なんとスープまで飲み干したラーメンが存在するらしい。めちゃくちゃ気になる……! 調べてみると佐野氏のお弟子さんが営む『支那そば 孤高』のラーメンだというので、食べに行ってみた。

・素材の味が生きる一杯

東京・八幡山にある『支那そば 孤高』は、化学調味料不使用・自家製麺のラーメンを提供しているようで、素材について書かれた看板からもその「こだわり」がヒシヒシと伝わってくる。

さっそく店内に入ろうとすると、ドアに「食事しながら携帯ゲーム・マンガ ご遠慮下さい。」と書かれた貼り紙を発見。これらは食事マナーとして当たり前のことだが、わざわざ貼られていることと佐野氏のお弟子さんという前情報から、ピリピリとした店内を想像してしまう。恐くないかな……

意を決して入店してみると店内は明るく、店主さんも恐そうじゃなくて一安心。佐野氏がスープまで飲み干した一杯は「醤油(税込870円)」とのことなので、注文して楽しみに待っていると……品の良さそうなラーメン、いや「支那そば」が来た〜!

麺は細めで真っすぐ。全粒粉も含めた数種類の小麦がブレンドされたものだというが、細い上に表面はプルッとしているものの決してフニャフニャにはならず、スープとよく絡む。程よい噛みごたえと、噛むほどに広がる小麦の甘みと香りが最高だ。

ガスバーナーで炙られた鶏チャーシューは「柔らかい」を通り越して「フワフワ」な食感。炙られて生じたほんのりとした香ばしさが、優しい鶏の味わいにアクセントを添えている。正直チャーシューは豚が至高だと思っていたが、ここの鶏チャーシューには信念を曲げられそうだ。

そして何より、スープが凄まじい。「醤油味」となるとどうしても醤油の味が前面に出てしまい、ベースに使われているものが何であっても「醤油を飲んでいる」感じがするものが多い。しかしここのスープは醤油が一人勝ちせず、味が複雑に絡み合っている。

地鶏に和豚もち豚、いりこや宗田鰹節など様々な食材を合わせて作られたベースに、生揚げ醤油・再仕込み醤油を数種類ブレンドしたものとシジミや牡蠣、椎茸などが足し合わせた醤油ダレが加えられているようだが、多数の食材どれもが活きているのに上手く調和している。ついでにメンマもめちゃくちゃ美味しい。

「醤油味」ながら決して単調にならない深い味わいを楽しみつつ、最後まで飲み干した。ラーメンの鬼・佐野氏が飲み干した一杯、恐るべし。

さぞ支那そばや食材に対して並々ならぬ「こだわり」があるのだろう──とお話を伺ってみると、意外な事実が発覚した。

・実はアスリート向け

「ラーメン屋を営もう」と思い立ってから現在の『支那そば 孤高』に至るまで、すでに25年以上が経過したという店主・菊地智さん。顔出しはNGなものの、快く取材に応じていただけた。

「支那そば」という呼称や、化学調味料不使用かつ厳選された素材を使用した一杯、というのはやはり師匠である佐野氏リスペクトなのか──と思いきや、その裏には意外な理由があった。なんと根底にあるのは「一流アスリートの肉体を育てたい」という熱い想いだったのだ。

実は菊地さん、大会にもガンガン出場して活躍するサーファー、つまりラーメン屋である前に「アスリート」だったのだ。そのため、身体づくりを考えてラーメンも含め、ジャンクなものは全く口にせず生活してきたのだという。

そんな菊地さんがラーメン屋に興味を持った理由は単純に「儲かりそうだったから」。ラーメンはジャンクなもの、しかし研究のため……とあちこちのラーメンを口にする中で佐野氏の支那そばに出会い、「これはジャンクじゃない、立派な料理だ!」と衝撃が走ったそう。

すぐさま佐野氏に弟子入りし、厳しい環境の中で修行を積んでいった菊地さん。師匠である佐野氏のこだわりと菊地さんのアスリート目線が融合して辿り着いたのは、「一流アスリートの肉体を育てる一杯」だったのだ。

看板などから化学調味料不使用、厳選された食材を多数使用した一杯……という事前情報を得て、いわゆる「舌の肥えたラーメン通」向けなのかと思っていたが、一番の狙いは「良い肉体を育てる」ことだそう。

支那そばに使われている数多の食材たちは、菊地さん自身が アスリートとして口にするものに気を遣っていたのと同じ目線で「この油は肉体にこう効くから〜」「この水は〇〇が含まれているから××の吸収を良くして〜」と栄養の面を重視して厳選されていたのだ。

立地の関係もあり『支那そば 孤高』には大学の強豪サッカー部や強豪ラグビー部の学生さんも通っているそうで、菊地さんは「一流アスリートの肉体を育てたい」思いを有言実行、そうした学生さんたちへトレーナーのご友人とともに食育やトレーニングも行なっているそう。

『支那そば 孤高』から旅立っていったアスリートの名を伺ってみたところ、現在プロとしてすでに大活躍している人も多数いたので驚いた。

とはいえ味に対してのこだわりも当然ある。しかし、味に関しては意外と「これとこれを足してみると美味しかった!」ぐらいのラフなノリで決めていることも多いそう。「こだわりの一杯」の意外な一面。てっきり「味重視」「食材オタク」なお店なのかと思っていた。

そして、「佐野氏リスペクト」かと気になっていた点がもう一つ。ドアに貼られた「食事しながら携帯ゲーム・マンガ ご遠慮下さい。」の貼り紙だ。恐々入店したものの、菊地さんが気さくだったので単に佐野氏リスペクトで貼ったのか? と思いきや。

「あの貼り紙、支那そば出しても一切食べずに閉店まで携帯ゲームするような奴が、何でか結構来たから貼っただけだよ。普通のお客さんが入り辛くなるし、本当はあんなの貼りたくないんだ……」

佐野氏まったく関係なかった。普通に迷惑なお客さんに悩まされたがゆえの、やむを得ない貼り紙だった。なんだか、はじめに恐そうなお店かと思っていたのが申し訳なくなってくる。

ちなみに、佐野氏が支那そばをスープまで飲み干した際の様子も「さぞ恐ろしい緊迫した状況だったのだろう」と伺ったのだが、

「何の緊張もない、本当に普通のノリだったよ。普通に食べに来て、感想とかも雑談みたいな感じで言われて。」

と、こちらも実情は全然恐くなかった。

修行時代からも佐野氏は全く恐い人ではなかったらしく、弟子である菊地さんの生活面すら気にかけて可愛がってくれるほど優しい人だったという。人もお店も支那そばも見かけによらない、ということか。

恐々と入店してから約2時間ほど。支那そばに関する様々なお話を伺っていくうち、最終的には超インドアな筆者のトレーニングメニューを考えてもらっていた。支那そばの話をしていたはずなのに、気づけば7割ぐらい筋肉の話をしていた気がする。

美味しさだけでなく、一流アスリートの肉体をも育てる「こだわりの一杯」。気になった方はぜひ、食べに行ってみて欲しい。お店を出る頃には、筋トレしたくなっているかもしれない。

・今回訪問した店舗の情報

店名 支那そば 孤高
住所 東京都杉並区上高井戸1-1-17
営業時間 火〜金曜 11:30〜13:50(LO)、18:00〜21:30(LO) / 土曜 11:30〜14:30(LO)、18:00〜21:30(LO) / 日曜祝日 11:30〜14:30(LO)、18:00〜20:00(LO)
定休日 月曜日(祝日の際は火曜日)

Report:伊達彩香
Photo:RocketNews24.